
2024年8月、座・高円寺にて上演の最新作『雑種 小夜の月』のDVD予約販売です。
※8月12日18:30の回を収録しております。(ステージゲスト:松島庄汰)
【STORY】
私の家はお団子屋さんです。
返田神宮という、わりと大きな神宮の参道で『小堀屋』という名のお団子屋さんを営んでいます。
五人家族全員で、お団子を売って暮らしています。参拝にくる、観光客の皆さんに、お団子を売って暮らしています。
お父さん、お母さんが団子を作り、出来た団子を蜜(みつ)姉と白(ゆき)姉が丸め、私が外で売り子をします。
この辺りは、雑誌に載るような観光地ではないけれど、家族が食べていくには十分で、日々の天気に一喜一憂しながら五人、可愛く商いしています。
高校を卒業して、店を手伝い始めて、あっという間に八年が経ちました。
うちはのんびりした家ですが、八年もあれば、なんもかんも変わっていきます。
白姉は生まれて初めて、蜜姉は通算二度目のお嫁に行って、私の部屋は繰り上がりで、少し広くなりました。小堀家きっての暴れん坊だった白姉は、今じゃすっかりお母さんで、暴れん坊の称号は娘の水樹ちゃんが受け継ぎました。
五人で夕飯を囲むことは、今じゃあんまりないけれど、昼間はみんなでやいのやいの言いながら、変わらず商いしています。
普段は飲食店用の白衣ばっかり着ているけれど、今夜はみんなで久しぶりに黒を着なくちゃなりません。
“裏の小父(おん)ちゃん”の、お通夜にみんなで行くんです。
裏の小父ちゃんの家は、神宮の駐車場の裏の急な坂を上ってった先にあって、小父ちゃんはそこで十匹の猫と一緒に暮らしていました。
小父ちゃんは昔、神主さんをやっていたそうで、この辺りの人はみんな、困ったことがあると小父ちゃんに相談に行ったそうです。
小父ちゃんが亡くなった後、お母さんはすぐに猫の引き取り手に名乗りを上げました。
そういう人は他にも大勢居たらしく、お母さんはその中でも、わざわざ一番年寄りの、お腹のとこに腫瘍のある、お婆ちゃん猫を引き取りました。
お父さんが猫アレルギーなのに、何でウチが引き取るの?と聞くと、昔、お世話になったからって。
お母さんは、それから色々教えてくれました。
三十五年前、お父さんとお母さんが、駆け落ちをしたこと。二人を匿ってくれたのが、裏の小父ちゃんであったこと。
この猫はその頃から小父ちゃんの家に居て、今は化け猫で間違いないってこと。
『雑種 小夜の月』は、裏の小父ちゃんと化け猫と、お父さんお母さんの徒歩五分の駆け落ちのお話です。